さぼりーまん、大家になる 第3話 副業バレ対策

勤め人をしながら大家になると気になるのは勤務先を解雇されないかという事だろう。大家を志すと真っ先に、気にした部分だ。
ネットで調べると真っ先に出てくるのが「★結論★ 家賃収入は金額がよほど大きくなければ副業にあたらないのでバレても大丈夫」系の法律面から回答だ。
正直、まったく役に立たない。法的に正しいかどうかが知りたいんじゃない。そんなことはどうでもいい。どんなに法律論で正しくて裁判で勝てても、トラブルになって会社に居られなくなると困る。その辺のケアまで考えた対策を提言してあるサイトは無かったように思う。

色々調べ、絶対に気づかれずに副業を行う事は不可能という結論に至った。
副業バレの主要因は住民税の徴収方法だが、これを普通徴収に切り替えても100%ではないし、そもそも普通徴収に切り替えた事を不審に思われるかもしれない。
何日も色々と考えたり調べているうちにふと、そもそも会社から「容認」を貰えば解決だと気が付いた。

目を付けたのが「農家の後継ぎ」だ。
会社によるのだろうが自分の勤務先の場合、兼業農家の同僚が結構、堂々と田植え・稲刈りで休みを申請したりするのを毎年見てきた。農業と言えど副業には変わらない筈なのに割と寛容だなと思っていた。もちろん、採用時に説明したうえで採用となっているなどの事情もあるのかもしれない。しかしこれは「副業」ではなく「家業」という認識で、「仕方が無い事」と判断されているのではと考えた。ならば同じ論法で不動産賃貸業も容認されるのではないかと思ったのだ。実際、農地にアパートを建てた状態で相続し、家賃収入のある同僚もいる。

まず上司に相談をしたいを持ち掛ける。出来る限り深刻そうな顔をすると良い。
そして以下の様に相談をする。
「親戚より子供がいないので賃貸不動産物件を引き継いでもらいたいとお願いされている。入居者と長い付き合いだから他人に譲るのは避けたいらしい。副業禁止だからと何度か断ったものの、親戚の中で居住地や健康面から不動産を引き取るのが可能なのは自分しかいない様だ。両親からも何とかならないかとお願いされている。仕事に影響しないか色々と聞いたが、不動産屋に管理は任せるのでオーナーの手間は確定申告くらいの様である。まったくの私事都合で申し訳ないのだが何卒、不動産経営を容認して頂きたい。」

ポイントは、
①会社が副業禁止なのを理解している
②家庭の事情(特に親の懇願)でやむなく
③仕事に影響しないかを自分は一番気にしていて、大丈夫そうである。
④家庭の事情で申し訳ないが何とかならないか?

我ながら完璧だ。

しかしここまで書いて何だが、積極的に騙しに行く感じで気が引けたので実際は会社には何も伝えずにスタートしている。試す場合は自己責任で願いたい。

なお、確定申告で普通徴収には変更していない。特別徴収なので不動産収入がある事はすぐに分る筈だ。
今のところ呼び出しは無いがさて、どうなるか。

大切なトリはサギじゃなくてウラドリ

先日、帰省して夕飯を食べていたところに”長男”から連絡が来た。長男(=自分)は今まさに夕食のハンバーグを口いっぱいに頬張っているのでオレオレ詐欺である。

表示された番号を見て、「来た来た!ちょっと聞いてて!」と嬉々として母がスピーカーにして電話を取った。機転を利かせて華麗にあしらう姿を見せたいようだ。

後に聞いたところによると、年に2回くらいの頻度でこの番号からオレオレ詐欺の電話がかかってくるとのこと。「風邪ひいて声がかれちゃって」と言って診察料とタクシー代の名目で数万円をせびるらしい。両親が「昨日、コメと野菜を送った中に10万円入っているから使いなさい。明日には届くよ」と蕎麦屋の出前みたいな事を言うと”長男”は素直に「わかった。ありがとう」といって電話を切るそうだ。最近、芋づる逮捕された海賊団とは本気度が雲泥の差だ。

唐突に「体調崩してない?栄養ドリンクでも送ろうか?」などと届いていたLINEは両親の裏どりであったようだ。なかなか出来た親だ。

さて問題の”長男”であるが、今回は”長男”が勤める会社の経理部長を名乗ってきた。別のアプローチを考えたようだ。

「”長男”くんが会社のお金を使い込んでしまった。本人も反省しているし、今までの会社に対する貢献度も考えると、弁済してくれれば警察沙汰にはしない。ご両親で立替てもらえないか」と実に慈悲深い提案を頂戴した。

犯罪も見逃してもらえる程とは、うちの”長男”は結構、優秀な社員のようだ。しかも使い込んだ金額は実に1億円と度胸も申し分ない。本物とは比べ物にならない傑物だ。

しかしそんな大金は当然ある訳もなく、相手も1億円がポンと出てくる家庭がそうそうある訳では無いとわかってるだろう。このあとどのようにお金を出させるのか逆に興味が出てきた。

返事に詰まっていると慈悲深い経理部長は、金額が大きいので分割払いでOKという。でもこの慈悲にすがるには明日、500万円を支払って誠意を見せる必要があるとの事。なるほど、そう来たか。しかしだんだんと話の筋は通っている気がして来るから不思議だ。この話術で実演販売でもすればテッペン取れると思う。

一方の母は困った様子である。話が違うとでも言いたげな顔で「どうしよう」と口をパクパクさせて旦那と息子に意見を求める。機転はどうした。

しかし意見を求められた側も親子二代、機転の利かない生粋の勤め人である。

「いったんお預かりします」「担当者が居ません」「請求書は出せますか」などと勤め人根性の染みついた案しか出てこない。優秀な”長男”に比べて実に頼りない。

あまり返事に時間をかけると相手が怪しんで電話を切られてしまうと焦った母が放った言葉は、「うちに息子は居ません!」だった。両者しばらく沈黙ののち、”長男”が電話を切った。今まで何度か”長男”を名乗って会話のキャッチボールができていた手前、どのような気持ちであったろうか。

電話を切った後、母は「もうかかって来ないかもしれない」と残念そうにしていた。”息子”に少なからず感情移入しているようだ。母よ、皆そうやって騙されていくのだよ。というかもう半分、騙されてるよ。

余計な話をしないで直ぐに電話を切るように指導した。


話は変わって「輸血の血が欠品しそう!たすけて!」とけんけつちゃんからSOSメールが来た。そろそろ行こうかと思っていたタイミングだったので近場のセンターに予約を入れて献血をしてきた。

ただ寝て血を採られるだけでお菓子ビュッフェとドリンクバーを無料でご馳走してくれて、血液検査のサービス付き。さらに何回も参加するとプレゼントもくれる。自分は10回でタオルハンカチと小皿を貰った。何かの詐欺かと疑うほどのオイシイ話だ。

しかし「オイシイ話は裏がある」とご家庭でしっかり教育を受けてきた賜物なのだろうか、宗教や体質等ではなく献血に反対して参加しない人も少数ながら存在する。

そんな献血反対派の元同僚は「今は血液は作れる。献血は既得権益を守るだけの活動」という”先進的な”ご意見を高々と掲げていた。ネットの記事で読んだらしい。

裏どり重要と伝えたい。

ちなみに最近、献血は健康と美容に良いとネット記事で見た。

詐欺でも実害ないし、裏どりはしていない。